今から40年位前まで、ココレッタの道路を挟んだ向かい側のファミレスがある場所には『有楽館』という東宝系の映画館がありました。
ゴジラシリーズ、金田一耕助シリーズ、八甲田山、あぁ野麦峠等々名作が上映されていました。あっ!ドラえもんシリーズもこの映画館でした。たのきんトリオの映画もやってた気が…。
しかし映画が下火になり、延岡のたくさんあった映画館が次々と閉館となっていったその流れに飲み込まれるように有楽館もその長い歴史に幕を下ろしました。
悲しかったな…夏休みや冬休み、稼ぎ時だと親は仕事に一生懸命で、どこか遊びにも連れて行ってもらえず
「これで有楽館いってこい!(怒)」
と千円札一枚もらって映画館に飛び込んだものでした。おつりでファンタグレープとコイケヤのポテトチップス買って席に着きます。
受付のおばちゃんもいつも行く僕の顔を覚えていてくれて、2回目は半額、3回目以降は
「また来たっけ…」
とタダでで入れてくれたりしてくれていました。
子供ながらそんな大好きな映画をたくさん見ていた有楽館がなくなるというのはものすごく寂しかったのを覚えています。
そして有楽館跡地が真っ平らの更地になった時…こんな噂が流れました…
「有楽館のとこ、なんか食べ物屋が来るらしいよ」
「だれかがハンバーガー屋がくるとか言いよったよ」
「嘘つけ!ケンタッキーが来るげなぞ!」
「ちがうてドーナッツ屋が来るって昨日聞いたよ!」
色んな噂でもちきりでした。
そこは当時アズマヤ・寿屋・MIYAKO(でしたっけ?大きな雑貨と洋服屋さん)が並んで立っている、県2番目の地価を誇る延岡のトレンドの発信基地といえる場所でした。
そんな延岡の原宿に(銀座かな?)ドーナッツの雄『ダンキンドーナッツ』がオープンしたのでした。
そのオープン初日からどこまでも続く長い行列と、さらに車で乗り付けようとしたお客さんの長い長い車の列は、三軒家まで続く長い長い大渋滞となってしまいました。
近所に住んでいる僕でしたが、ダンキンドーナッツが口に入ったのはオープンから何日も何日も後のことでした。
その時くらいでしたか、近所に住んでいる名物お土産のも屋のおじさんが
「こんげよ!延岡んやかんたぎりよ!すぐ冷めっしまう!」
と名言をのたまったのでした!
まだ小学生だった僕は
「なんけおいちゃん、どういう意味け?」
背の高いおじちゃんだったので見上げるように聞くと
「延岡の人間は新しいもんを見ると、やかんで湯を沸かすごとピーって熱くなるとよ!今んドーナッツ屋が出来た時んごとよ!」
僕はウンウンとうなずきます。
「でも見てん!もうやかんの火を止めた時んごつ、スーッと冷めるのも早いとよ!それが延岡ん人間よね」
ほーっそれが『やかんたぎり』ですか…と妙に納得したのを覚えています。
あれから40年(きみまろ風)…先日、そのおじちゃんの娘さんと話していたときのことです…
「駅が新しくなってどんげけ?お店もいそがしいじゃろ?」
と心配して見に来てくれた娘さんと話していると
「でも駅もこれから人が少なくなって落ち着いてくるじゃろね…いまは『やかんたぎり』のごつなっちょるもんね!」
出た!『やかんたぎり』!本当に40年ぶりに聞きました。
なんだか懐かしい気持ちと、いやいや…僕もお店をがんばってかつての賑わいをとりもどせるよに、今の賑わいを一時のものにしないように頑張っていこうと改めて思うのでした。