延岡名物 高田万十

ナンバーズ博士

YouTubeを見ていると、よく流れてくる動画があります。
白い作業着を着た職人さんが店の中で「『助けてください!』この動画を上げてからたくさんのお客様にご来店いただいて…ありがとうございます!」みたいに感謝を述べているやつです。
和食屋さんなのか何なのか、よくわかりませんが、あれは広告なんでしょうね。

でも僕、つい早送りしてしまいます。
…だって、やってみたくなったら困るでしょ?(笑)

夏休みも終わって、当店にとって一番困るシーズンがやってきました。
暑くもなく寒くもない、そういう中途半端な時期です。
うちは寒くないとたい焼きがバンバン売れませんし、暑くないとかき氷も出ません。
まさに「困ったシーズン到来」です。

あぁ…助けてください!あっ、言っちゃった。
あの動画の人みたいに。

でも焼き台の前に立ちながら考えることといえば、「宝くじでも当たらないかな…」なんて妄想ばかり。
買わなきゃ当たらない、でも買っても当たらない。
そんな宝くじを120%楽しんでいる人物がひとりいます。通称「ナンバーズ博士」。

博士は決して当たるわけじゃないんですが、過去の当選番号をすべて記憶しているんです。
特に「7724」みたいなゾロ目の前後の当選番号までスラスラと出てくる。
そしていつもこう語ります。

「○○(僕のこと)君!神様のいたずらか…」

キャッチーな一言から始まり、外れた理由を延々と説明してくれるんです。
「今回1589だったんやけどね、2679って買ってたんよ!
1を2に、5を6に、8を7に、一つずつずらして買っちょってみてん…えらいことよ!」

「○○君!紙一重…」
「今回の当選番号1489…前前前回に俺が買った番号1489やったんよ!
もし今回買っちょってみてん…そらえらいことが起こったよ!」

熱く語る博士の口からは、「悪魔がほほ笑んだ」「運命のいたずら」「歯車が外れるさだめ」…
まるで新刊小説の帯に書いてあるようなキャッチコピーが次々飛び出します。

でもですね…
紙一重だろうが神様のいたずらだろうが、結果はひとつ。
それ全部「はずれ!」です。

言いたい。僕は大きな声で言いたいんです。「は・ず・れ!」と。

だって博士は、後ろにお客さんが並んでいようがお構いなし。
自分の分析を語り切るまでは帰ってくれません。
しかも…たい焼きを買わないんです。

ジョギングの途中に寄って、分析とうんちくを語り終えると
「じゃ!」と一言だけ残して颯爽と走り去る博士。
いったいどこの人なんでしょう…。

でもまぁ、あれだけ楽しそうなら外れても本望かもしれませんね。

はぁ…それにしても宝くじ当たらないかな。
このままじゃ…あぁ、誰か助けてください!
あっ!また言っちゃった。

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