延岡名物 高田万十

*

親の気持ち

   

先日、閉店前くらいの時間に、よくお子さんと来られていたお客さんが、同僚らしき方々と一緒にご来店くださいました。

なんとなく、
「今日はお子さんとご一緒じゃないんですね?」
とたずねてみると

「実は今日、中学校の卒業式で…」
とお客さん。

それはおめでとうございます、と言いかけたその先に、少しだけ続きがありました。
「明日が高校の合格発表なんですよ…。それを見ないと、心から祝えないというか…」

――そうでした。卒業のあとに合格発表。
あの、なんとも言えない一日があるんでした。

思い出します。
仕事をしながら、合否の連絡を待っていたあの日のことを。

家内が娘を連れて高校へ向かい、
「今から見に行きます」
の連絡が来てからが長い。

電話も来ない。LINEも来ない。
でも怖くて、こちらから「どうだった?」とも聞けない。

ただひたすら、卵を割って、粉を練っていたあの時間。

「そうでしたね…。お気持ち、お察しします。合格しているといいですね」

なるべく軽く、でも少しだけ寄り添うようにそう伝えると、
「今日は酒飲んで早く寝ます(笑)」
とお客さん。

ええ、その気持ち、よくわかります。
一番近くで見てきたのは親ですから。
頑張ってきた姿も、しんどそうな顔も、全部知っている。
だからこそ、報われてほしいと願うのも、やっぱり親なんですよね。

そして次の日。

「いらっしゃいませ!」
と入ってこられたお客さんを見て、なんとなく分かりました。

「よかったです!無事、合格でした!」

満面の笑み。
こちらまで力が抜けるような、あの感じ。

「それはよかったですね!おめでとうございます!」

ほっとした表情を見ながら、つい聞いてしまいました。
「失礼ですが、どちらの高校に?」

「N高です!」

――おぉ。うちの娘たちの後輩。

「吹奏楽、続けるんでしょうねぇ」
なんて話をしながら、文化祭の思い出なんかも少しだけ。

そして最後に、どうしても言わずにはいられない一言を。

「三年後は…もっと大変な戦いが待ってますよ。地獄の大学受験が…」

……まぁ、わざわざ言うことではなかったかもしれませんが。

それでも、
あの“待つ時間”を知っている者としては、
つい、先のことまで思ってしまうのでありました。

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