延岡名物 高田万十

*

NOと言える日本人

   

「Nが酷すぎる!」

さて、これが何のことかお分かりでしょうか?

先日、県外で働いている娘たちと久しぶりにビデオ通話をしながら晩ご飯を食べていました。

我が家は昔からよくしゃべります。

僕もしゃべる。
家内もしゃべる。
娘たちもしゃべる。

誰かが話題を出せば、そこから枝分かれして話が増え、気付けば二時間くらい平気で経っています。

以前は毎日顔を合わせていた娘たちが、今では県外で社会人として頑張っているんだなぁ…。

そんなことを思いながらスマホ越しに娘たちの顔を見ていると、

「・・・お父さん、それ酷すぎん?」

と上の娘。

すると下の娘も

「私も前から思ってた!」

と追い打ちをかけます。

なんの話だろう?

晩ご飯の量か?
人生設計か?
お小遣いの額か?

すると、

「えー!」

と振り返った家内が僕の顔を見て言いました。

「お父さん、Nが進んでる!」

そう言いながら額を指差します。

N?

なんのN?

ニュース?
日本?
ノーベル賞?

違いました。

どうやら僕の額がN字に後退しているという話だったようです。

亡くなった親父は左右対称にきれいなM字でした。

しかし親父に似るのが嫌だったのか、ひねくれ者の僕はN字に進行しているようです。

「嘘やん!」

と立ち上がって洗面所へ向かおうとすると、

「お父さんOも進んでる!」

と娘。

なにーーーっ!

額だけでは飽き足らず、頭頂部まで参戦してきたようです。

年間休日24日。
一日拘束時間13時間。

どうやら人生の苦労が頭皮にも現れているらしいです。

そういえば少し前、家内とドライブに行った時のこと。

景色を眺めている僕の後ろ姿を家内が写真に撮ってくれました。

後で見せてもらうと、そこには見知らぬ中年男性の頭が写っていました。

誰だこの人。

フランシスコ・ザビエルの遠い親戚でしょうか。

朧月夜のように、うっすらと肌色が透けて見える頭頂部。

心霊写真かと思いました。

いや、心霊写真ならまだ救いがあります。

自分の頭でした。

男なんて普段あまり鏡を見ません。

まして頭頂部なんて見えません。

合わせ鏡でもしない限り現実を直視しなくて済むんです。

だから気付かなかったんですね。

いや、気付いてはいたんです。

ただ認めたくなかっただけで。

しかし考えてみれば、僕は昔から

「理不尽なことにはNOと言える人間でありたい」

と思って生きてきました。

もしかするとその強い思いが頭皮を通じて現れたのかもしれません。

額に力強く刻まれた

『NO』

の文字。

・・・いや待て。

正面から見たら

『ON』

ですね。

というわけで、本日もスイッチONで頑張ります。

ちなみに1000円以内の育毛トニックでは、今のところ奇跡は起きておりません。

トホホ・・・。

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