二番目の休み
怒涛の6月でした…。
年間休日24日、一日拘束時間13時間のたい焼き屋が、6月に休んだ日数…。
なな、なんと6日!
あぁ…疲れました。
そして財布も僕も泣きました…。
二番目の休みは3連休。
上の娘が生まれたのは早朝でした。
「破水した!」
その言葉に飛び起きた僕は、
「落ち着け、落ち着け…。普段どおり、慌てるな」
と自分に言い聞かせながら、なぜかドライヤーで髪をセットしていました。
その瞬間から、僕のダメ親父人生は始まったのかもしれません。
そんな僕に、家内は娘が生まれた直後、看護師さんへこうお願いしました。
「最初に主人に抱かせてあげてください。」
恐る恐る、生まれたばかりの我が子を抱き上げます。
三千数百グラム。
その重さは体重だけではありませんでした。
光も、希望も、夢も、愛も、この世の幸せという幸せを全部ぎゅうぎゅうに詰め込んだようなずっしりとした重さでした。
両腕から全身へ、ビリビリッと電気が走るような感覚。
今でも忘れられません。
そして、その飛び切り新鮮で愛らしい娘を見つめながら、僕は心の中で固く誓いました。
「この子は絶対に手放さない。」
「嫁にはやらない。」
「結婚ダメ!絶対!」

……その固い誓いも、今日、今ここで破られようとしています。
何が何やら分からないまま、気が付けばチャペルの扉が開きました。
娘と一礼し、一歩前へ。
僕はすぐ横の椅子へ静かに身を寄せます。
そのあと家内が一歩進み出て、娘と向かい合い、一礼。
深く頭を下げた娘に、家内はそっとベールをおろしました。
そして再び僕が立ち上がります。
娘と歩調を合わせながら、一歩、また一歩。
祭壇へ向かって歩いていきます。
娘が生まれた日から今日まで。
頭の片隅にぼんやり浮かべてきた「いつか」の景色が、一歩進むたび、一枚また一枚と本物の景色に塗り替えられていくような、不思議な気持ちでした。
新郎と握手を交わし、娘の手を取り、その手を新郎へ渡す。
その瞬間でした。
「あぁ…。命より大切な娘を、これからはこの人が守ってくれるんだ。」
そう思った途端、朝からずっと地に足がつかなかった気持ちが、すとんと静まりました。
朝の福岡は雨でした。
きっと、どこかの新婦のお父さんの、あふれ出した涙が降らせた雨だったんでしょう。
披露宴が終わる頃には、雨も上がり、空には晴れ間がのぞいていました。
それと同じ頃、どこかの新婦のお父さんの目にも、もう涙は残っていなかったそうです……。
……そんなこんなで、怒涛の一日も無事終了。
朝は地に足がつかず、ウエディングドレスの娘との初対面では泣き、控室でその感動を親戚に話しつつ泣き、チャペルでは涙をこらえつつ泣き、披露宴では笑っては泣き、人生で忘れられない涙の一日になりました。
そして家内とふたりで夕食へ。
家内は
「あんまりお腹すいていない」
と胸いっぱいはもちろん、披露宴のごちそうでお腹もいっぱいのようです。
うろうろ歩き回って選んだのは某有名油そばのお店です。
普段なら迷わず「大盛り」一択です。
しかしこの日は、なんとなく普通盛りを注文しました。
さすがに今日は、胸がいっぱいだったんです。寂しいような…うれしい気持ちはもちろんあります。でもどこか寂しい気持ちがあるんです。
……ところがです。
この「油そば」これがまた、とんでもなく美味しい。
気が付けば家内が
「ちょっと多かった」
と言って差し出した残りまで、きれいにいただいてしまいました。
結局、大盛り以上食べてるじゃないですか。
胸はいっぱいでも、お腹にはまだまだ余裕があったようです。
つづく
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