延岡名物 高田万十

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おさる

   

おさる
子共のころ文章を書くことも勿論、読むことも嫌いでした。
本好きの姉が、児童文学集を嬉々として読みふける横で
「僕は本を読むと頭が痛くなるとよね…」
とうなだれ
『こん子は馬鹿じゃないちゃろか!…小学校入学できんかったら…どんげすればいいちゃろか…』
何度となく我が家の秘密家族会議があったそうです。
そんな親の心配をよそに・・・おかげさまで小学校に無事入学できたときのこと
「よかった!馬鹿でん入学できるちゃね!」
と(僕の寝たあとに)家族で祝杯を挙げていると
「入学できても勉強ついて行けんやろう。どんげすっと?」
6歳年上の姉の一言で祝杯がお通夜のようになったそうです…(かわいらしいピカピカの一年生の僕の横で)

そんな僕が本好きになったきっかけは、やはり本好きの姉の影響でした。
中学になると中間・期末と地獄のテスト期間なるものがあります!
学生時代の僕は、常々『学校から試験!…いや授業と教師を無くせばいいのに!』と本気で思うほど学校は好きなのに勉強は嫌いでした。
部活もテスト準備期間は休みになるし…どうしても勉強しなくてはいけません。
日にちも差し迫り、夜の時間も遅くなると…なぜか無性に部屋の片付けがしたくなったり、映画が見たくなったり本が読みたくなったりして勉強どころではなくなることがありました。(何でだろうと不思議に思っていましたが、ただの現実逃避であると大人になって気づきました)
「そんげ息抜きがしたかったらコレ読んでさっさと勉強しね!」
と渡してくれたのが赤川次郎先生の「三毛猫ホームズの推理」でした。
姉は大の赤川次郎ファンで、本棚には赤川次郎の小説が書店なみにズラリとそろっていました。
読んで見ると、軽快でコミカル!読書初心者にも読みやすく1時間ほどで読んでしまえる内容でした。
そこから僕の本好きは始まった気がします。

そんな僕が今では本を読むことは勿論、へたくそなりに文章を書くことも大好きに成長したというのも自分ながら変な気持ちもします。

今こうやって文章を考えながらキーボードを打っているわけですが、生意気にも僕なりに気をつけている事もあるんです。
それは文章に『起・承・転・結』をつけるという事です。
最後は『結』落ちが無いとなんだかもやもやしてしまうので、へたくそなりに何日も頭の中で文章を考えてまとまったら夜にパソコンに向かう…。
書いていたものの、うまくまとまらなかったらそっとゴミ箱へ…。
毎日その返しだったりします。

そうやって書いていると、だんだん脚色というかスパイスを利かすこともしなくてはならなくなったりします。
例えば『歩いていて転んだ』と書こうと思ったときに、ただそうかいても面白くないので『歩きよったらひっ転んだ』と方言で親近感を持たせたり、『さっきのお袋との喧嘩の原因は・・・やっぱりお袋が悪いよな・・・と考えながら歩きよったらひっ転んだ!むむむっ・・・お袋め・・・』といつものパターンで枝葉を付けて脚色したりもします。
でも多少大げさになることはあっても、事実に基づいて書いているのです!

・・・しかし、話す度に、聞く度に、誰かに告げ口する度に、事実と違う・・・いや自分に都合のいい話に脚色する、脚色職人がいます。
お袋です!・・・我が親ながらそのスパイスの利かせ様は凄まじいものがあります。

先日の事です、
「駅が新しくなりますね!このお店のあたりも区画整理があるんですか?」
若い女性のお客さんが訪ねました。
「ここの辺りはこのままですよ!駅の周辺だけがあたらしくなります!」
旧高千穂鉄道側にホームが移動するらしいですね!
「そうなんですか・・・ずーっと以前にこの辺りも再開発で駅ビルになるはずだったってお父さんがいってましたよ」
・・・それがなければ、今頃サラリーマンとして商事会社で働いていたかもしれません・・・。
そうなんです今から20数年前に3度目の駅前再開発事業の計画が立ち上がっていました。
その計画では高田万十のお店の場所も駅ビルとして再開発される予定でした。
オマケに1~2階はショッピングセンター、それから上はマンションとして販売されるとか!
なんとお店に住んでいる人は上階のマンションに住むことが出来るというすごい計画でした。
親父からこの計画をきたときは
「へー・・・そうなんだ」
と思ったくらいでしたが(サラリーマンの週休二日制とボーナスの魅力に逆らえませんでした)、ヒーバーの旦那さんヒージーの
「お店を頼むぞ・・・」
という今際の言葉に心悩ませていた時でした。

住屋ももらえて、お店も新しくなってからのスタート・・・よこしまな算段でのUターンでした。

とお客さんに話していると
「私しゃそんげな話聞いたことねーわ!」
とお袋・・・。
知らんはず無いじゃない!
「私たちは年寄りじゃからお店のそば(新しくなるお店の上階のマンション)に住むから、あんた達は実家を新しくして住んだら良いわ!」
と自分に都合良い事ばっかり言ってましたもん!
「そんげな話聞いたこと無いわ!」
まだ言います。

あんまり悔しいから
「そんげないい話がなかったら、サラリーマン辞めてねーわ!」
思わず言ってしまいます。

そしたらお袋・・・いい年して
「♪今さら言ってもしょうがない!♪今さら言ってもしょうがない!」
とシンバルを叩く猿のおもちゃのような仕草で手拍子しながら歌います。
ムムム!ムカー!
「あんた馬鹿じゃねーと!いい年して、そんげな猿のオモチャのごつしてから!」
頭に来ます!
「はいはい!悪りかったね~!猿のような顔で悪かったね!」
確かに猿のような顔だけど・・・ソコまでは言ってません!親子といえども礼儀ありです!

そんなことがあった夕方のことです。
お店のピンク電話に商品の間違いがあったとお叱りの電話がありました。
電話に出たお袋に聞いて見ると
「1時間前くらいにきたお客さんで、ハムタイにするか黒あんタイ焼きにするか随分悩んで黒あんにしたお客さんがいたやろ」
確かにいらっしゃいました!随分『ハム・・いや黒・・・やっぱり』と悩みに悩んでいたお客さんがいたのは覚えていました。(結局どっちにしたかは覚えていませんでした。
「ハムタイをお願いしたのに、黒あんがはいっていた」
との事でした。
大変申し訳ありませんでした。間違いはあってはならないのですが・・・最近特に気をつけないと注文を聞いたそばから忘れているときがあります。
「あんたちょっとミスが多いよ!注文聞いたらメモするようにせんといかんよ!一回復唱もせんといかんやろ!」
当たり前のアドバイスをします。
「なんけ!えらそうに(怒)!私だって間違えることもあるわ!」
間違えが多いからアドバイスをしてます。
「なんか!うるさい!なに騒ぎよるとか!」
あまりの剣幕に親父が割って入ります。
「お父さん見てん!こん人(僕)が私の顔が猿みたいじゃから注文間違えるって怒るとよ!」
えー!そんげな話じゃったかね!
「そんげやって私しゃ・・・いっつも怒られて・・・いじめられよるとよ・・・」
なんか被害者になっています・・・。

人生には耳かき程度のスパイスがちょうど良いんです!だって何事も無ければ、刺激も無いしおもしろみも無い!

でもね・・・お袋・・・最低限ウソはいかんでしょ!ウソは!


 

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