根はいいやつ

酒などの席で、普段はおとなしい人が酔っ払って人に絡んだり悪態をついてしまうことがあります。俗に言う山芋を掘るってやつですね。
そんなときに
「普段はおとなしいやつなんだけどね…根は良い人間だから勘弁してやってくれよ！」
なんて絡まれたり悪態をつかれた被害者に、大きなお世話の弁解を代理してくれる人がいたりしますね…。
僕も以前、とある打ち上げの席で
「あんたに前から言いてぇかった事があるとよ！嫁は絶対ソンなこと言ったらいかんって言いよるけど、今日は言わせてもらうわ」
とものすごく堅いお仕事にお就きのお父さんに散々絡まれて、お店のことやら商品のことやらボロカスに言われたことがあります。
普段はお堅い仕事のお父さんらしく、しっかりと頼りになる人物だったので、
「オレのことそんな風に思ってたんだ…」
とものすごく残念に思った覚えがあります
そのときも、別の参加者の方から
「酒に酔ってましたからね…根はいい人なんで気にしないようにしたら良いですが！」
と慰めてもらったことがあります。
…ちなみに、それ以来そのお堅い仕事のお父さんはなんだか素っ気ない態度であまり話してくれないようになりました。

でも僕は思うんです…
それは根が悪いからそんな言葉が出るんだと！根が真っ黒で悪～いからそんな毒のような言葉が出るんだと。
普段はいい人を演じて、いい人の仮面をかぶって、いい人の分厚い鎧を身にまとって、いい人ぶって生活をしているんだと思います。
でもどんなにいい人ぶって生きていても、根の、根っこの部分が悪いから、芯の部分黒いから思わず根っこを絞ると『黒い汁』『悪い汁』が出てくるんだと思うんです。

だって『本当に根はいい人』ならば、どんなに絞っても無色透明のキレイな汁しか出てこないはずです。
根っこの割れたどの先っぽをちぎって絞ってもキレイな汁しか出てこないはずです。

なぜそう思うかですって…？
それは僕の根っこも真っ黒で悪い根っこの部分が大多数を占めているからです。だからこそ分かるんです。

だって学生時代の友人なら、そんな風に僕に絡んだら…その数百倍の悪態を泣き出すまで浴びせられ、プロレスごっこやら空手ごっこ、ボクシングごっこで楽しく暴れる羽目になると想像することでしょう…。

でも今は子供と嫁を持つ父親で、地元の町で商売をする立場の弱い自営業者です…。いい人を演じて、いい人の仮面をかぶって、いい人の分厚い鎧を身にまとって、いい人ぶって毎日を送っている高田万十勤務の弱い弱い父親です。
もし親父だけの飲み方『親父会』での出来事だったなら、もしかしてプロレスごっこになっていたかもしれませんが、そのときは運良く妻も子供も参加している打ち上げでしたので『グッ』と我慢することが出来ました。
そんな西洋の騎士のような頑丈な鎧を身にまとう僕ですから分かるんです。

根が悪いから黒い悪い汁が絞れば絞るほど出るんだと…

そんなブラックサンダー高田が危うく顔を出しそうな出来事が最近ありました。

諸用で九州内のとある『方言のきつい』地区へ行く用事が出来、電話で事前に訪問する時間をやりとりしていました。電話の相手は年配の男性、人の良さそうなおじさんでした。
当日、遠方と言うこともあり、また別件の予定も重なっていたため約束の時間に少し遅れての訪問となったので慌ててその方を訪ねると、出てきた男性は55歳～65歳、スポーツ刈りのジャージ姿。スポーツをしていて日に焼けてるのか、焼酎が大好きで顔が赤く焼けているのか鼻や頬が赤く焼けているように見えます。田舎の人の良いおじさんを絵に描いたようなそんな見た目方でした。
ニコニコしながら
「道ぬぃ迷いまじたが？えらく遅かったなずっぺ！」（きつい方言だということで！）
『そうなんです別件もありましたし、道に迷ってグルグル車で回ってしまったモノだから』
と言おうと思ったのですが気は焦るし、バタバタ走って息も上がっています
「グルマで回っていたもんだから」
『グルグル車で』が一緒になって『グルマ』と言ってしまいました…。

そんな事気にもしないで用事を済まそうと言い直しもせずスルーしていると…
「あんだ、えらぐ訛ってまずね（笑）！どこの田舎のひとですか？」
と本気でチヨット見下し気味に笑いました。
『この赤ら顔が！オマエんごつ訛ってねーわ！この田舎者が！』
と悪い黒い汁を絞ってしまいそうになりましたが、このときも運良く妻と娘がその場にいましたのでグッと耐えて汁をこぼさずにすみました…。

本当は根はいい奴なんですけどね…